産業保健や看護、福祉の業界で長年にわたりご活躍されて
きました。現在は中小企業で産業保健師として働きながら、
専門職後見人など幅広い領域の仕事に精力的に取り組んで
いらっしゃいます。
大学の看護学科を卒業後は市役所に行政保健師として入職しました。以前から「産業分野って面白そう」と思っていたのですが、看護師としての臨床経験も大切だと考え、看護師として働いたのち、産業保健師になりました。
産業保健師になってよかったなと思うのは、従業員を支援することで早期発見、早期対応につながったときです。また、メンタルヘルス不全や健康診断結果で心配な従業員への対応で早期介入することで重症化予防につながったときは、ほっとすると同時にやりがい、よろこびを感じます。
一方で、産業保健師の活動は「目に見えにくい」「評価しにくい」面があります。どうしたら経営トップにわかってもらえるか、我々の仕事を認めてもらえるかが永遠の課題、苦労する部分です。社内に医療職がいるメリットをわかってもらえるよう、うまくプレゼンできれば、産業保健師というマイナーな仕事がもっと広がっていくと思います。
法令で定められている業務が中心であり、前任者からの引継ぎもあったことから、そこまで苦労はありませんでした。もちろん、わからないことは調べましたし、過去の介護や訪問看護の知識や経験なども役立ちました。それでも困ったときは、誰かに聞けば道は開けると思っています。
産業保健師になって初めて関わった産業医は女性の方で、女性が働くことが大変な時代に、育児と仕事を両立されていました。また、当時はわたし自身も育児や親の介護などに追われており、フルタイムで働くことが大変な状況でした。そんななかで産業医から言われた「フルタイムでなくてもいい。コツコツとキャリアを積んでいくことが大切。継続すれば道は開ける」がすごく心に響き、記憶に残っています。
また、産業保健師は働きやすい反面、当時はなかなか求人がありませんでした。
かつての女性産業医の言葉ではありませんが、仕事がない間は他分野の仕事でも3年、5年とコツコツ続けながら経験を積んできたことで、今の自分につながっていると感じます。
現在は、ドクタートラストから紹介いただいた企業に産業保健師として訪問しているほか、独立型の専門職後見人、介護教員、特定保健指導の指導員をしています。
法令で定められた業務に加えて、健康について楽しく学べるような参加型イベントや講話を企画しています。
現在、企画しているのは、外部講師による「女性の健康」がテーマの講話で、最後に芳香療法の紹介も兼ねて、みんなで楽しくバスボムを作る予定です。
また、ウィズコロナにおける対面・オンラインのハイブリット開催をすべて自分でできるよう学びを深めています。
医療も福祉も好きで、さまざまな経験を積んできました。
特に、後見の仕事を通して「人間って生きていくのが大変だな」と感じつつあることから、よろず相談ができるようなポジションで、なおかつ福祉や介護にも対応可能な独立型の産業保健師ができたら面白そうだなと思っています。
わたしが産業保健師になった当時は決して目立つとは言えない職種でしたが、今は組織を変えていかなくてはいけないと考える企業、産業保健師を活用したい企業が増えていると感じています。産業保健師はメンタル不調者の対応だけでなく、健康障害の予防ができ、かつ、アフターフォローもできる存在。看護職ならではのきめ細やかなアプローチができますよね。看護師としての臨床経験がある産業保健師が企業に関わるのはとてもいいことだと思います。
一方で、データ活用や取り組みの見える化・数値化、そして企業への実績アピールなどは、わたしたち一人ひとりが努力しなくてはいけません。
ぜひ多くの人が産業保健師に興味を持ち、一緒にこの業界を盛り上げてくれる人が増えるといいなと願っています。